福岡の相続税専門税理士事務所 武内相続センターです。

今回は、個人から法人への相続(遺贈)についてお話したいと思います。

相続税の申告義務について知りたい方は「相続税がかかる人とは」の記事をご覧ください。(クリック)

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個人から法人への相続(遺贈)

財産の相続(遺贈)や贈与は、主に個人から個人へと行われるものです。
しかし、その行為が個人から法人に行われることもあります。
例えば、Aさんのもつビルを、
Aさんが代表を務めていた社会福祉法人へ相続(遺贈)するといったケースです。

この場合、財産をもらった側が法人であるならば、
その財産の所得に対して法人税を納付すればよいと考えがちですが、
そうではありません。

租税回避行為ができないようになっている

経営者の方であれば、ピンとくるかと思いますが、
法人税の税率は最大23.2%であるのに対し、
相続税や贈与税の税率は最大55%と大きな差があります。
そのため「税金の支払を少なくしよう」と考えた場合に、
個人→法人→個人と間接的に行えば租税回避行為が
できるのではないかと考えるかもしれません。

しかし、相続税法ではそのような租税回避行為ができないように
財産をもらった側である法人を個人であるとみなし、
相続税や贈与税を課すように定められています。

個人とみなす法人

個人とみなす法人は大きく分けて
①人格のない社団等
②持ち分の定めのない法人
が挙げられます。

①人格のない法人等とは

法人ではないけれども、法人と同様の活動をしている団体を指します。
例えば、学校のPTA・研究会・クラブ・労働組合・マンション管理組合が挙げられます。

②持ち分の定めのない法人とは

定款等や法令の定めにより、その法人の社員等が
その法人が所有する財産の分配や払戻を請求することができない法人を指します。
例えば、お寺等の宗教法人や社会福祉法人等の公益法人が挙げられます。

人格のない社団等は、無条件に個人とみなして相続税や贈与税を課しますが、
持ち分の定めのない法人は相続(遺贈)や贈与の行為により、その行為をした人の
親族など特別な関係のある者の相続税や贈与税の負担を不当に減少させる
こととなるときは個人とみなして相続税や贈与税を課します

相続税法第66条(人格のない社団又は財団等に対する課税)
第1項
代表者又は管理者の定めのある人格のない社団又は財団に対し
財産の贈与又は遺贈があつた場合においては、
当該社団又は財団を個人とみなして、これに贈与税又は相続税を課する。
この場合においては、贈与により取得した財産について、
当該贈与をした者の異なるごとに、当該贈与をした者の各一人のみから
財産を取得したものとみなして算出した場合の贈与税額の合計額をもつて
当該社団又は財団の納付すべき贈与税額とする

第2項
前項の規定は、同項に規定する社団又は財団を設立するために
財産の提供があつた場合について準用する。

第3項
前二項の場合において、第一条の三又は第一条の四の規定の適用については、
第一項に規定する社団又は財団の住所は、
その主たる営業所又は事務所の所在地にあるものとみなす。

相続税法第66条第4項(持ち分の定めのない法人に対する課税)
前三項の規定は、持分の定めのない法人に対し財産の贈与又は遺贈があつた場合に
おいて、当該贈与又は遺贈により当該贈与又は遺贈をした者の親族その他
これらの者と第六十四条第一項に規定する特別の関係がある者の相続税又は
贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときについて準用する。
この場合において、第一項中「代表者又は管理者の定めのある人格のない社団又は
財団」とあるのは「持分の定めのない法人」と、「当該社団又は財団」とあるのは
「当該法人」と、第二項及び第三項中「社団又は財団」とあるのは
「持分の定めのない法人」と読み替えるものとする。

ただ、個人とみなした法人に相続税や贈与税を課すと
法人税の二重課税が発生するため、それを回避するため法人税は控除されます。

相続税法第66条第5項(法人税額相当額の控除の規定)
前項の規定の適用がある場合において、これらの規定により第一項若しくは
第二項の社団若しくは財団又は前項の持分の定めのない法人に課される贈与税又は
相続税の額については、政令で定めるところにより、
これらの社団若しくは財団又は持分の定めのない法人に課されるべき法人税
その他の税の額に相当する額を控除する。

 

個人とみなした法人へ財産を贈与した場合の贈与税

そして、[個人]から[個人とみなした法人]に財産を贈与した場合、
贈与税の計算が[個人]から[個人]へ財産を贈与した場合と計算が異なります。

それは、個人とみなされた法人が複数の個人から贈与により財産を取得しても
贈与税の計算はその個人のみから取得したものとして計算し、
その計算した金額の合計により贈与税額を算出します。(贈与者単位制)

これは人格のない社団等や持ち分の定めのない法人は本来、
寄付行為により財産を取得しそれを元手に活動を行うため、
その元手に相続税や贈与税を課すと活動をすることができないこととなるためです。

ケース1:個人であるAさんがCさんから現金300万円、Dさんから現金500万円を取得した時

贈与税額 (300万円+500万円-110万円)×40%-125万円=151万円

ケース2:法人であるB社がC社から現金300万円、Dさんから現金50万円を取得した時

贈与税額
①(300万円-110万円)×10%=19万円
②(500万円-110万円)×20%=53万円
①+②=72万円

個人が法人に財産を相続(遺贈)や贈与をした場合、
その法人の純資産価額が増えるためその法人の株価が上昇します。
その結果、事業再編税制などに影響を及ぼすことがあります。
法人に財産を相続(遺贈)や贈与をする際にはご注意いただければと思います。

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