今回は、中小企業の経営者が保有する自社株式についてお話しします。

事業承継税制

中小企業の経営者が亡くなり、中小企業の後継者が自社株式を相続するとした場合に
自社株式の評価が想定以上に高くなり、多額の相続税負担を強いられるケースがあります。
そこで、後継者の税負担を軽減し、円滑な事業承継を促すために、設けられた制度が「事業承継税制」です。

 

経営者から後継者が相続等により、自社株式を取得した場合に、納付すべき相続税のうち、
自社株式に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予され、後継者の死亡等により、
納税が猶予されている相続税の納付が免除される。[平成29年4月1日現在法令等]
参考:国税庁ホームページ

つまり、中小企業の自社株式を相続する後継者の自社株式に関する相続税を80%猶予し[※]
後継者が死亡した際には、猶予税額を免除するという規定になります。
この規定は、事業を承継する後継者にとって非常に有利な制度となっている反面、
制度の適用には厳しい要件が設けられています。
[※]平成30年度改正で100%猶予に改正されました。

 

平成30年度改正

平成21年度税制改正において創設された「事業承継税制」は、何度か改正を⾏ってきたものの、いまだ要件が厳しく、その要件がひとつでもクリアできなくなれば猶予されていた贈与税・相続税を⼀括で納付しなければならないなど、利⽤するにはリスクの⾼いものでした。このたびの平成30年度税制改正で、その要件が⼤幅に緩和されます。

対象株式数 すべての株式 2/3に制限
自社株式に係る相続税の納税猶予割合 100% 80%
後継者 最大3名の後継者 1人に限定
相続時精算課税制度の拡充 直系親族以外も可能 直系親族に限定

詳しくは、事業承継の際における相続税・贈与税の納税猶予制度についてをご覧ください。

これまで、適用時の足かせとなっていた要件等が緩和されているため、今後は上記税制を適用する会社が増えることが予想されています。

 

留意事項

  • 適用要件等の充足ができなくなった場合には、猶予されていた税金を一括納付することになってしまいます。
  • 相続税の申告期限までに、上記特例の適用を受ける旨を税務署に提出し、納税猶予される相続税及び利子税の額に見合う担保を提供する必要があります。
  • 納税の猶予を受けている際には、税務署へ「継続届出書」を提出する必要があり、届出書の提出を怠った際には、猶予税額の全部又は一部の納税が発生するため注意が必要になります。
  • 都道府県への書類提出が必要となります。

その他にも、注意すべき点はありますので、適用には慎重になる必要があります。
適用を検討される際には、是非一度ご相談されることをお薦めします。

自社株式の事業承継対策は、事前に対策をとっておくことで、
将来の後継者への引継を円滑に進めることができます。
相続時だけではなく、事前に後継者へ自社株式を贈与する場合にも、
贈与税に関する「事業承継税制」があるため、
興味がある際にはぜひ一度弊社へご相談ください。